アトピーの治療は長期戦になることが多いです。もしアトピーが重症化してしまった場合、ステロイドを使用することもあるかもしれません
アトピーを発症、または悪化してしまってステロイドによる治療を検討しているが、これから費用がいくらかかるのかが気になるという方や、現在ステロイドを使用した治療を続けていて、もう少し金銭的な負担を減らしたいという方は多いと思います。
私も経験があるのでよくわかるのですが、アトピーの治療には地味にお金がかかります。病院の受診料や薬代はもちろんの事、重症化するとガーゼや包帯、石鹸やシャンプーなど、ひとつひとつは大したことはないのですが、合計で考えるとかなりの負担になる場合もあります。
その中で、ステロイドにかかる料金だけでも把握できたら、支出の見通しも立てやすくなるでしょう。さらに、もし薬代を減らすことができたら随分と金銭的に楽になるとは思いませんか?
このページではステロイドにどのくらいのお金がかかるのか、さらにはステロイドでかかる金銭的負担を減らす方法について説明します。
目次|このページでわかること
ステロイド外用薬(塗り薬)の値段はいくらなのか
まず、本題であるステロイドの値段はどのくらいなのかということについて説明していきます。
結論から言うと、一般的な10gのチューブ1本につき大体400円~300円です。
私たちが医師の診察を受けて、薬局で処方してもらう薬にかかる費用の内訳は下記のようになります。
- 【調剤基本料】…薬剤師さんに調剤してもらうことに対する基本料金です。
- 【調剤技術料】…薬剤師さんが薬を揃えてくれることに対する技術料です。
- 【薬学管理料】…薬剤師さんが薬の用法などを説明してくれたり、使用歴などを記録したりすることに対する費用です。
- 【薬剤料】…国が定めた薬そのものの値段です。
これらを合算した値段に保険の負担率分をかけた値段があなたがお支払いする金額になります。
これらの金額の算出方法は薬や患者さんや、薬局になど様々な条件によって変動して複雑ですが、例えばアトピーの方で、ステロイドの「外用薬(塗り薬)」を処方してもらうのであれば、基本的には下記のような式になります。さらに薬局によっては様々な条件によって加算されたりするため、実際にはこれよりも高くなったりします。
(【調剤基本料】410円+【調剤技術料(外用薬)】100円+【薬学管理料】500円+【薬剤料】x円)×0.3=支払い額
こちらににステロイド薬の「薬剤料(薬価)」についてまとめた表を記します。この表に赤で記載された数字を上記の式のxに代入することで実際にそのステロイドにかかる費用を求めることができます。
例えば、ストロンゲストクラスのステロイドである「デルモベート軟膏」という塗り薬の10gチューブであるならば
(410円+100円+500円+287)×0.3=389円/本≒390円/本なります。
あとは、このチューブを何本処方されるかで掛け算をしましょう。
さて、ここまでステロイド剤にかかる料金について説明してきましたが、「あれ?意外に安くないかな?」と思った方もいると思います。しかし、仮に月にいくらかかるのかを計算するとかなり大きな数字になります。
実際には薬の代金の他に、病院での診察料や処方箋代などもかかりますし、処方されるステロイドの量がチューブ一本とは限りません。さらに症状が重いとすぐに使い切るため、何度も通院しなければいけなくなります。
例えば私が脱ステロイドをする前はどうだったかというと、一回の受診でステロイドの10gチューブを5~6本処方してもらい、1~2週間で使い切るような感じでした。そのため、月に5000~6000円程かかっていました。さらに遠方に通っていたため交通費などもかかっていました。
このように考えると、抑えられる出費なるべく抑えたいですよね。
現役薬剤師さんに聞いた薬代を抑える方法
先に説明したように、薬にかかる費用は【薬剤料】+【薬学管理料】+【調剤基本料】+【調剤技術料】です。
実はこの中で「調剤技術料」以外の3つは、場合によって下げる事ができるのです。
その方法を説明していきます。
【薬剤料を抑える方法】ジェネリック医薬品への変更
ステロイドにかかる費用を抑えたいのであれば、「ジェネリック医薬品」という選択肢も考えられます。
ジェネリック医薬品であれば、通常の薬に比べて3~7割ほど価格が安くなっています。
ジェネリック医薬品とは後発医薬品とも呼び、すでに普及している薬の特許が切れたことで、他の製薬会社が作った、同成分・同効果の薬のことです。ジェネリックに対して、先に普及している通常の薬を「先発医薬品」と呼びます。
新薬の開発には十年単位の時間と数百億円以上の費用がかかります。そのため開発にかかった莫大な費用を回収するために、それなりに高価な価格に設定され、さらに特許を取得するため20〜25年の間、独占的に製造と販売が許されます。
それに比べて、ジェネリック医薬品はこの特許が切れた薬と同じ有効成分を使って同効果の薬を開発するため、開発期間が2~3年とかなり短くなっています。
そのため、開発にかかるコストが大幅に抑えられるため、販売価格もとても安いものになります。
ジェネリック医薬品のデメリット
ジェネリック医薬品とは、先発医薬品と同成分・同効果で安い薬だと説明しました。しかし、ジェネリックにもデメリットが存在します。
それは安全性という点で見ると微妙であるということです。
すでに説明している「ジェネリックは特許切れの薬を模倣した、同効果の薬である」ということは正確な表現ではありません。
薬に対する特許には、薬の成分そのものに対する「物質特許」と、それを製造する上で使用する添加物や、薬の形などに対する「製剤特許」があります。
物質特許が切れた薬品でも、製剤特許が有効な薬では、同じ添加物の使用ができません。添加物が変わってしまうと作用にも変化が出てきてしまいます。
さらに、先発医薬品と同じ有効性と言っても、完全に同じではなく、「統計学的に同じ」であるということに過ぎません。
「統計学的に同じ」という言葉は±20%は同じであるとみなすということです。例えば、何か商品を買う時に120円と80円は同じと言っているようなもので、かなりのどんぶり勘定であると言えます。
これがどういうことかと言うと、薬の効き過ぎによる副作用や、反対に薬の効果が出にくく、症状を抑えるには不十分ということに繋がります。
また、製薬会社の広報ではジェネリック医薬品に対して「厳しい試験を行っている」と謳っていますが、ジェネリック医薬品の試験に「有効性の試験」はあっても「安全性」の試験は存在しません。
このように、ジェネリック医薬品は有効性にバラツキがあり、安全性という面では微妙であるといえます。
アトピー治療は長期戦になることが殆どです、そのためジェネリックのステロイドを使用することによる金銭的メリットは大きいのは確かです。
安全性と金銭的メリットのどちらを取るかは、医師、薬剤師と相談の上、慎重に判断しましょう。
ジェネリック医薬品を処方してもらうには
さて、ここまでジェネリック医薬品について説明してきました。
では、ジェネリッのステロイドをもらうにはどうしたらいいでしょうか。
結論から言うと、医師や薬剤師さんにジェネリック医薬品に変更したい旨を伝えばいいです。ジェネリック医薬品をもらうために、特別な手続きなどは必要ありません。
また、処方箋をもらって薬局で処方してもらう場合には紙面を確認してみてください。処方箋には薬の「変更不可」の欄があります。そこに「×」や「✓」などの印がなければ、ジェネリックに変更ができるということですので、薬剤師さんに相談してみるといいでしょう。
しかし、希望してもジェネリックに変更してもらえない場合もあります。
一つは、ジェネリック医薬品の在庫が無い場合があることです。
ジェネリック医薬品は、大手よりも小さな製薬会社が作っていることが多く、大手企業に比べて生産機能が低く、数が出回らない場合があります。
もう一つは、先ほど述べた安全性の点です。
すでに説明したように、ジェネリック医薬品は先発医薬品に比べて、安全性という点でムラがあります。そのため、医師や薬剤師さんの判断で変更してもらえない場合があります。その場合はおとなしくプロの意見に従うようにしましょう。
【薬学管理料を下げる方法】お薬手帳を持参する
薬学管理料を下げる方法として、同じ薬局に定期的に通い、自身の服用歴を記載した「お薬手帳」を持参することがあります。
もう少し詳しく説明すると、「6ヶ月以内に最来局し、かつお薬手帳を持参する」ということです。これをすることによって薬学管理料が500円→380円になります。
そもそも薬学管理料とは薬剤師さんが、患者さんに薬の使い方を指導したり、使用歴を記録して、過去に使用した薬と組み合わせの良くないものを処方しないようにしたりするための労力に対して発生する費用です。お薬手帳を持参することで、薬剤師さんはこれらの管理が楽になります。
お薬手帳は薬局で頼めば無料で作ってもらうことができます。
アトピーの治療は長期化することが多いため、ステロイドを使用する場合は頻繁に処方してもらうことになります。薬剤師さんの手間を減らし、お金も安くなるため皆が得する方法です。ぜひ作ってもらいましょう。
【調剤基本料を抑える方法】規模の大きい薬局でお薬をもらう
最後に「調剤基本料」を減らす方法です。それは門前の大きい薬局に処方箋を持っていくことです。これにあたるのが、大学病院や大型病院、郊外の総合病院に隣接している薬局です。このような薬局に行くと調剤基本料が410円→250円になります。
具体的に言うと下記のように定められています。
毎月4000回を超える受付があり、加えて一つの病院から70%を超える集中率で受付がある、もしくは月に2000回を超える受付があり、90%以上の集中率のある薬局に行くことです。
一つデメリットがあるとすれば、多くのお客さんが来る分待ち時間が長くなることがあります。
このように多くの集客がある薬局は調剤基本料が安くなります。もしご自宅の近くにこのような薬局があるのならば行ってみるといいでしょう。
ここまでの説明のように、薬にかかる費用は節約できる場合があります。これらの方法を組み合わせることでお財布への負担を減らすことができます。
まとめ
アトピーの治療は長期戦になることが多いです。
また、アトピーの治療には薬だけでなく、ガーゼや包帯などにも地味にお金がかかります。そのため、ステロイド薬を先発医薬品から、ジェネリック医薬品へ変更することで、長期的に見ると金銭的負担を大幅に減らすことができます。
私は、子供の頃は当然ながら親が負担してくれていました。
しかし、大学を卒業後、就職して一人暮らしをした時に、一度だけアトピーが再発し、酷く悪化した時期があります。社会人1年目は保険の控除が無いとはいえ、一人暮らしをしていたため金銭的余裕はあまりありません。
ステロイドこそ使わずにいましたが、包帯やガーゼ、保湿剤などの消耗品にかけるお金が多く精神的にとてもストレスでした。この経験もあり、日々かかる費用を抑えたい気持ちはよくわかります。
しかし、ジェネリックが安いからといってむやみにジェネリックに固執してはいけません。ジェネリックの安全性については高くない可能性があるからです。
もし、仮にジェネリックを選択して悪化した場合は、長期的に見てさらに大きな金銭的負担がかかることになります。
金銭的なメリットと安全性のどちらを取るかは、医師や薬剤師さんと相談の上慎重に決めましょう。