アトピーの症状は皮膚に現れるため、皮膚上の炎症ばかりに目が行き、ステロイドや免疫抑制剤を塗りたくることに注力しがちです。
確かに、アトピーの症状はつらいです。それはよくわかります。
しかし、アトピーの本質はそこではありません。皮膚上の現象ばかりに目をやっても、それは対症療法であり、根本の問題は解決できません。
アトピーは皮膚(だけ)ではなく体の内側からくる病気です。
一言で簡単に言うと、アトピーは体内に蓄積した毒素を排出しようとする現象です。
この体内の毒素を排出する働き、いわゆるデトックスで活躍しているのが「腎臓」と言う臓器です。アトピーの人はこの「腎臓」の働きが弱くなっている可能性があります。
腎臓の働きを改善することによって、アトピーの症状を改善できる可能性があります。
このページでは、アトピーと腎臓の関係について説明して行きます。
目次|このページでわかること
アトピーとは肌の新陳代謝を利用した排出現象
まず、アトピーとは何かという所から理解する必要があります。
アトピーには様々な原因がありますが、最も大きな原因の一つが「肌の新陳代謝を利用した毒素の排出現象」です。
「毒素」というととても抽象的な表現ですが、具体的には、体の老廃物、食べ物からエネルギーを作り出す際に生まれる代謝副産物(燃えカス)、化学物質のことが挙げられます。
こういったものが肌の新陳代謝を利用して排出されていくのです。
詳しく説明して行きます。
例えば、私たちが普段食事をして体内に入れた食べ物は、消化して吸収された後、血液に乗って体の各組織へ運ばれ、そこで組織の細胞を作ったり、生命活動をするエネルギーとして利用されたりします。
そして、細胞内でエネルギーを生み出したものは必ず、代謝副産物という体にとって不要なものを生み出します。燃料を燃やした後の燃えカスのようなものです。
この燃えカスは今度は再び血液に乗り、肝臓で解毒された後、腎臓で濾過されて尿や便などとして排出されて行きます。
これが、大まかな体内の循環のサイクルです。
しかし、動物性のタンパク質や、こってりとした油物などを過剰に摂るような乱れた食事を続けるとこのサイクルに破綻が生じます。
動物性のタンパク質や、脂っこいものなどは人間の体にとって消化しにくい物です。充分に消化出来なかった食べ物は、老廃物としてたまりやすくなります。すると、体に毒素の元を取り入れることに対して、排出の作用が追いつかなくなるのです。
この様に、通常の排出では排出しきれなくなると、私たちの体は「奥の手」として肌の新陳代謝を利用して体内の毒素を排出しようとするのです。そのため肌は「人体最大の排出器官」と呼ばれています。
こうして肌から排出される際に、炎症や湿疹、落屑(肌がカサカサして剥がれ落ちること)という症状が現れるのです。
このように、アトピーの原因として最も大きなものとして、「肌の新陳代謝を利用した毒素の排出」があります。つまり、体内の吸収と排出のサイクルを正常に戻してやれば、肌からの排出がおさまり、アトピーの症状を軽くすることが出来るのです。
この時に重要になってくるのが「腎臓」です。
腎臓が弱ると毒素の代謝機能が落ちる
ここまで、アトピーの大きな原因のひとつとして、体内毒素の排出のサイクルが乱れているということを説明しました。
毒素排出のサイクルで、重要な働きをしている臓器のひとつが「腎臓」です。
腎臓の働きについて説明していきます。
【腎臓の主な働き】
- 血液の濾過
- 水分の循環
- 新しい血を作る
血液を濾過して老廃物を排出する作用
腎臓の働きとして最も代表的なものが「血液の濾過」です。
私たちの体内を流れる血液の流れの中で、フィルターの役割をして血液中の毒素を捕まえ、主に尿として体外に排出する役割を担っています。
私たちの体の中には常に血液が循環していて、体に必要な栄養素、酸素、そして老廃物などの毒素が運ばれています。
この循環の中で、血液は必ず腎臓を通ります。腎臓に入ってくる血液には酸素や栄養素のような「体にとって必要なもの」と老廃物や過剰な塩分など「体にとって不必要なもの」が入り混じっている汚れた血液です。
腎臓は「糸球体」と呼ばれる不純物を濾すフィルターの役割をする組織で構成されていて、ここで不要なものは搦め捕り、必要なもの、再利用出来るものは再び血液に戻すという働きをしているのです。
例えると、水道の浄水器のようなものです。水道水は浄水場から送られ、水道管を通って運ばれ蛇口から出てきます。しかし、そのままの状態では、消毒に使用された塩素や、水道管から溶け出した鉄分など、不純物が混ざっていて、味や健康面で問題があることがあります。
そこで多くの家庭では水道に浄水器というフィルターを付けて、この不純物を濾過し、美味しく安全な水として使用するのです。このように、腎臓は体内の血流の中で、フィルターの役割をして血液を濾過し、血を綺麗な状態に保つ働きがあります。
このフィルターに負荷をかけすぎるなどすると、血液中の不純物を十分に濾過することができなくなり、その不純物を再び血液に乗せて体の各組織に送ることになります。
このようなものが溜まって、排出しきれないものが肌から排出される作用がアトピーの炎症につながるのです。
水分の流れの調節
血中老廃物の濾過の話と似ていますが、腎臓のもうひとつの役割として「体液量(体内の水分)の調節」があります。この調節機能が落ちてもアトピーの悪化に繋がります。
私たちの体では水分は、血管内では血液、血管から出て細胞間に入るとリンパ液、細胞の中に入ると細胞内液となり、身体中を満たしています。
腎臓はこの体中をめぐる水分の循環を調節する働きがあります。この循環が滞り、必要以上に水分があると、体のトラブルの元になります。
これを中医学で「水滞」といい、日本の漢方では「水毒」と言います。
このような、体内の水分の滞りは、体の代謝を弱くしてしまうことに繋がります。こうして停滞した水分が肌から排出されると、ジュクジュクとしたアトピーの炎症が現れることになります。
腎臓には体内を巡る水分の循環を調節する働きがあります。この働きが弱くなると、代謝が落ちアトピーの症状が現れやすくなります。
新しい血液を作る
次に腎臓の働きとして説明するのが「新しい血液」を作るという働きです。
血液(赤血球)は骨髄によって作られますが、それは骨髄の中の細胞が「エリスロポエチン」というホルモンの刺激を受け取ることによって行われます。腎臓にはこの「エリスロポエチン」を作り出す働きがあり、腎臓が弱ると血液の産生がうまく行かなくなります。
血液(赤血球)の代表的な働きとして「酸素を運ぶ」ということがあります。
酸素には皮膚の再生を促す作用があり、赤血球が不足して酸素が充分に行き渡らないと肌の再生が遅くなることに繋がります。皮膚は古くなったり傷んだ細胞と、新しい細胞が入れ替わることによって再生します。(新陳代謝) この入れ替わりに酸素は必要不可欠なものなのです。
先に、肌をの新陳代謝を利用した排出作用について説明しましたが、新陳代謝が弱まるとこの排出作用も弱まり、さらに毒素を溜め込みやすくなり、アトピーの改善が遅くなります。
このように、腎臓には新しい血液を作る働きがあります。そして、それはアトピーで傷ついた皮膚の再生を促します。腎臓の働きが弱まり血液が不足すると、肌の再生が遅くなり、治りにくくなります。
ここまでの説明のように、腎臓は体内に溜まった毒素排出サイクルにおいて、とても重要な働きを担った臓器です。そのため腎臓が弱まると毒素の排出が追いつかなくなり、体は肌の新陳代謝を利用して排出するという暴挙に出ます。その時に、アトピーの湿疹や、炎症といった症状が出るのです。
反対に、腎臓の働きを健全に保つことができれば、アトピーの症状は改善に向かうと言えます。
腎臓の機能を高めるには
さて、ここまでの説明で、アトピーの改善において腎臓はとても重要な働きをする臓器です。
腎臓が健全に働いていれば、体内に毒素を溜め込むこともなくなり、アトピーの改善は楽になります。
では、どうすれば腎臓の働きを高めることができるでしょうか。その方法を説明していきます。
腎臓を温める
腎臓にとって「冷え」は大敵です。冷えると血管が収縮するため血圧が上がります。そのため、腎臓の毛細血管をいためてしまうのです。
したがって、冷たい飲み物、食べ物をはなるべく避け、体を温めるような物をとるといいでしょう。
体を温める食品を摂る
体を温めるものとして、単純に「温かいもの」を摂ることも効果的です。ですが、さらに体質を体を暖かくする方向に改善していくことも有効です。
食品には体を温める作用のあるものと、冷やす作用のあるものがあります。これは単純に食べ物の温度のことではありません。
食品ひとつひとつを見ていくとキリがありませんが、大雑把に考えると自然のものであれば、寒いところで採れるものには体を暖かくする作用があり、反対に暑い地域でとれるものであれば、体を冷やす作用があります。
具体的に言うと、根菜類、キャベツ、豆類などが体を温めてくれる食材です。また、果物、青い葉のもの、キノコ類、砂糖などは体を冷やすので控えた方がいいです。
また、紅茶やコーヒーなども体を冷やします。これらに含まれているカフェインは一時的に体温を上げてくれますが、その後体を冷やしてしまうのです。
このように、体を冷やす作用のあるものを避け、温める作用のあるものを積極的に摂ることで腎機能を高めることができます。
物理的に温める
直接的に腎臓を温めるのも効果があります。
腎臓はウエストの位置の背中側にあります。そこを温めることで腎機能を高められます。
例えば、入浴時にシャワーなどで済ますのではなく、しっかりと湯に浸かり、少し長めに入ることがおすすめです。
また、ウエストの背中の位置にホッカイロを貼るのもいいでしょう。夏場は薄着をする上に、室内では冷房が効いているため冷やしやすい環境です。ホッカイロまでは必要ありませんが、なるべく冷やしにくい装いを心がけるといいです。
このように腎臓の位置を温める工夫をするだけで、腎臓の働きは良くなります。
腎臓にとって「冷え」は大敵です。反対に温めることで腎臓の機能も高め、体内の毒素の排出を促進させることができます。
腎機能を高めることができればアトピーの改善はとても楽になります。
腎臓機能を高めるツボ
私たちの体には体内の臓器と繋がる末梢神経が集中したツボのような箇所があり、それを「反射区」と呼びます。
反射区を刺激することで臓器の働きを高めて自然治癒力を高めることができます。
腎臓の反射区を紹介していきます
足の反射区
まず、足にある反射区から紹介していきます。
湧泉(ゆうせん)
湧泉という反射区です。全身の活力に関わる反射区です
足の中指から垂直に線をおろし、土踏まずと交わる辺りから、親指の幅くらい降りたところにあります。
左右ともに5秒程度押すといいでしょう。
太谿(たいけい)
次に太谿という反射区です。全身の血流を良くして代謝を上げる働きがあります。
図のように、足の内側のくるぶしのアキレス腱近くのくぼみにあります。こちらも両足5秒ずつ刺激するといいでしょう。
背中の反射区
次に背中の反射区を説明します。
腎兪(じんゆ)
腎兪はまさに腎臓の位置にあり、とても重要な反射区です。
へその裏側のラインと、ウエストのラインを結んだ点から、ウエストライン上に親指2本分ほどの幅分外に離れた位置です。
両指で同時に10秒程度押しましょう。
手の反射区
最後に手の反射区について説明します。手は最も刺激しやすい場所なので、気づいた時に刺激するように心がけてみましょう。
労宮(ろうきゅう)
労宮という反射区です。全身の血の巡りを良くする働きがあります。
握り拳を作った時に、中指の先が当たる場所が労宮です。この部分を押しながら、円を描くようにグリグリと刺激しましょう。
上記に紹介した反射区を刺激することで、腎臓の働きを高めて体内毒素の排出を促進することができ、アトピー改善に大きく役立ちます。
ぜひ、試してみてください。
まとめ
アトピーの問題は皮膚上ではなく、体の内側にあることが多いです。
その中で最も大きなものの一つが、体内に溜まった毒素(老廃物、代謝副産物、化学物質)が体内で作られることと、排出されることの循環が乱れて、外に出しきれていないということです。
この循環において重要な働きを担っているのが「腎臓」です。腎臓が弱まると毒素の排出力が弱くなり、排出しきれなかったものを皮膚の新陳代謝を利用して排出しようとした時に、アトピーの症状が現れるのです。
反対に腎機能を高めることで、アトピーの改善は遥かに楽になります。
さらに、腎機能を高めることで、低血圧や、メタボリック症候群などの生活習慣病の予防にもなります。
ぜひ、このページで紹介したことを実践し、腎機能を高めることを意識してみてください。