アトピーと腸には密接な関係があります。腸には、私たちの体の免疫細胞のうち、約7割が集中しており、「人体最大の免疫器官」とも呼ばれています。 アトピーは、何らかの原因で免疫システムに不調が起きることによって起こる疾患です。したがって、腸の状態を良くすることで、アトピー改善の効果が期待できるのです。
そのためには、乳酸菌などの善玉菌を補うことが有効ですが、せっかく善玉菌を摂取しても、その働きを思うように実感できないことがあります。 その要因の一つが腸の「冷え」です。腸が冷えた状態であると、腸の働きが落ちて免疫システムに狂いが生じることになってしまいます。
アトピーを本気で治したいと考えるならば、腸は温めるのが正解です。
このページでは、温度が与える腸への影響について詳しく説明していきます。
腸を冷やすと免疫システムが乱れる
まず、基本的な考え方として、「冷え」は体の様々な生命活動の低下に繋がります。体の中で起きている生命活動に必要な様々な科学反応は、普段の人の体温よりも少し上(約37℃)の温度の時に活発になる性質があるからです。
腸の働きも同様です。冷たい清涼飲料水などを頻繁に飲む習慣があったり、薄着をしすぎてお腹を冷やしてしまいがちだったりすると、腸の働きが衰え免疫システムに狂いが生じ始めます。するとアトピーの発症や悪化の原因になってしまうのです。
腸の冷えによる免疫への悪影響についてより具体的に説明していきます。
腸の消化力が落ちる
冷えによる影響として、まずあげられるのが腸の消化力の低下です。腸の消化力が落ちることによって、アトピーの原因物質を吸収しやすくなってしまうのです。
ところで「消化」と聞くと多くの人は「胃」を想像すると思います。しかし、実際のところ、その認識は正確ではありません。確かに胃は消化液を分泌します。ですが、その消化液に含まれる酵素(化学反応を促進する物質、この場合は分解)は腸で働くのです。
すでに述べたように、体内の科学反応は体温より少し高い程度の温度で活性化します。食物の消化の場になっている腸が冷えることで食べ物の消化がしにくくなってしまうのです。
では、なぜ消化力が落ちるとアトピー悪化の原因となってしまうのでしょうか。
私たちが体内に摂り入れた食物は、分解(消化)されることで初めて栄養として利用することができます。この消化する働きが低下してしまうと、分解が不十分な状態で体内に吸収されてしまうことがあります。すると、体の中ではその物質を栄養としてではなく、異物として認識してしまい、免疫細胞によって攻撃されてしまうことになります。
これが皮膚組織で起きると、免疫細胞が異物を攻撃する際に放出される炎症物質によって、皮膚にアトピーの炎症が生じてしまうのです。
例えば、動物性のタンパク質などは良い例です。タンパク質は消化の過程で、「ペプチド」という段階を経て、アミノ酸にまで分解されます。アミノ酸という最小の単位まで分解されることによって栄養としての利用が可能になるのです。
もともと、動物性のタンパク質は人間の体では消化がしにくい物質です。そのため、消化力が弱っていると分解が不十分なペプチドの状態で体内に吸収されてしまいます。すると、ペプチドは体内で外界からの「異物=敵」とみなされてしまい、免疫細胞の標的になってしまうのです。その結果、アトピーの炎症の悪化につながるのです。
このように、腸が冷えた状態であると腸の消化・吸収力が落ちてしまい、アトピーの原因物質を体内に取り入れやすくなってしまいます。このことによってアトピーを悪化させてしまうのです。
腸を冷やすことで消化力が落ち、未消化で吸収してしまう食品がアトピーの原因物質になる
白血球の消化力が落ちる
次に、免疫細胞の代表である「白血球(マクロファージ)」の消化力の低下です。白血球は体内に侵入してきた細菌やアレルゲンなどを取り込み、細胞内で分解することによって無害化する働きを持っています。
この白血球が元気な状態で消化力が十分であれば問題は起こりません。しかし、白血球の消化力が落ちてしまい、異物の分解が十分に行われないと毒性が現れてしまいます。すると、それが、白血球の消化の場となっている皮膚組織で刺激となってしまい炎症を起こしてしまうのです。
白血球の消化力は腸の消化・吸収力に依存します。血液中に取り入れられる栄養分のほとんどは腸から吸収されるためです。腸の消化・吸収力が落ちると血液中に栄養分が不足し、結果的に白血球の消化力が落ちることになるのです。その結果、すでに述べたように、皮膚組織で炎症を起こすことになります。
また、白血球の消化力の低下によってもたらされる害はこれだけではありません。もう1つ厄介なものに「白血球自体が抗原(炎症の原因物質)となって体中を巡ってしまう」というものがあります。
先に白血球は体外からの異物を取り込む性質があると述べました。消化力が低下している状態で細菌を取り込んでしまうと、白血球は変質してしまいます。すると、体内にいる他の健康な免疫細胞はこの変質した白血球を「自分以外のもの=敵」と認識して攻撃してしまうのです。
そして、このような白血球は血液に乗って身体中を巡ります。そして、その流れついた先で体の各部分の組織に細菌を移してしまいます。言わば、体を守るはずの白血球が「細菌の運び屋」になってしまうのです。その結果、菌を移された組織は白血球と同様に免疫細胞の攻撃対象になってしまいます。それが、関節で起これば関節リウマチ、頭皮で起これば円形脱毛症、そして皮膚で起きればアトピー性皮膚炎として現れるのです。
ここまでの説明のように、腸が冷えることで消化・吸収力が落ち、免疫細胞の一つである白血球の働きが落ちてしまいます。それによって、白血球が異物に対処できなくなったり、白血球そのものがアトピーの原因物質になったりしてしまうため、アトピーを悪化させてしまうのです。
腸内細菌の働きが落ちる
腸内環境を良くして、腸の免疫を整えるには「腸内フローラ」と呼ばれる腸内細菌群のバランスを、人体に有益な働きをする「善玉菌」優位にする必要があります。
そのためには、日々の食事やサプリメントなどで「乳酸菌」を補うことが大切です。しかし、一生懸命乳酸菌のサプリメントを摂っても腸が冷えていると効果は期待しにくいです。
先に述べているように、「冷え」は生命活動を低下させてしまいます。これは、人だけでなく腸内の善玉菌でも例外ではありません。
善玉菌が最も活発に働くのも人の体温より少し高い程度(約37℃)なのです。ところが、どういうわけか、体に悪影響を及ぼす「悪玉菌」に限っては温度の低下の影響をほとんど受けないのです。
悪玉菌には「冷え」の影響は無いのに、善玉菌は「冷え」によって働きが落ちてしまうため、結果として腸内は悪玉菌有利な環境に傾いてしまうのです。
「アトピーの改善に乳酸菌がいい」とされているのは、腸内環境が良好な状態であると、炎症を抑える働きをする細胞が活性化されるためです。
「冷え」によって善玉菌の働きが落ちると、腸内環境を改善して免疫バランスを整えることができなくなってしまいます。そのため、アトピーが治りにくくなるのです。
まとめ
腸は人体最大の免疫器官であり、体の免疫細胞の大部分が腸に集中しています。
免疫の乱れであるアトピーを改善するには、免疫の大元である腸の状態を良くする必要があるのです。
しかし、ここまで説明してきたように、冷えた状態であると腸の様々な機能が落ちてしまいます。
例えば、テレビや映画の1シーンで雪山で遭難するというものがあります。その時、登場人物は強い眠気に襲われ「寝たら死ぬ」と、仲間に起こされます。これは、極度の冷えによって体の機能が落ちていくからなのです。
これは、体の中の細胞レベルでも同じことであり、腸の働きが落ちるのも同じような理由です。
そのため、アトピーを改善したいのであれば、冷たい清涼飲料水やアイスなどを食べる習慣はやめて、暖かい飲み物、食べ物を多く摂るようにしましょう