アトピーに悩んでいる方の多くは、ステロイドや抗アレルギー剤などを使用して症状の改善をしようと努力しています。
しかし、そういった薬に頼った方法は、あくまで「対症療法」にすぎず、続けたところで根本の解決にはなりません。
それどころか、ステロイドに頼りきりの治療を行なっていると、副作用のリスクもあります。
根本的な改善を望むのであれば、アトピーに負けない体質に改善していかなくてはなりません。
体質を改善するには、体を作る素になる栄養面からアプローチしていくことが有効です。
「亜鉛」という栄養素を聞いたことがあるでしょうか。
耳慣れない名前かもしれませんが、亜鉛はアトピーの改善において、様々な働きをする栄養素です。
そして、日本人にはこの亜鉛が不足している人が多いです。この亜鉛を補うことで、アトピーに負けない体作りの大きな力になります。
このページではアトピーと亜鉛の関係について詳しく説明していきます。
亜鉛のアトピーへの効果
亜鉛はアトピーの改善において、とても多方面にわたって良い効果をもたらしてくれる栄養素です。
まずはその効果から順番に説明していきます。
【亜鉛の作用】
- 免疫力を高めてくれる
- 皮膚の再生を促進してくれる
- アレルギーや炎症を鎮める
免疫系の乱れを調整してくれる
亜鉛の摂取がアトピーに良い作用として、最も重要なのが「免疫系の働きの調整」してくれるということです。
アトピーは私たちの免疫システムが過剰に反応してしまうために起こる現象です。その時に働く免疫細胞を作る器官として、「胸腺」という器官があります。
亜鉛が不足すると胸腺の働きが落ちてしまいます。そのため充分に成熟した免疫細胞を作り出すことができません。
このような免疫細胞は、体にとって有害か無害かを判断する機能が未熟です。そのため、無害な物を有害と判断して攻撃してしまったり、逆に有害な物を攻撃できなかったりして、免疫反応が撹乱されてしまいます。
胸腺は免疫細胞を育てて送り出す教育機関のような物です、亜鉛はその教育機関を運営するために必要な資金に例えることができます。亜鉛が不足してしまうと、免疫細胞の教育がうまくできずに、有害物質とそうでないものを判断できない免疫細胞が胸腺から全身へと卒業していくのです。
すると、敵味方の判別のできない免疫細胞が有害な物質以外の異物にも反応して、炎症を起こしやすくなってしまいます。
このように、亜鉛が不足すると免疫システムが乱れて、アトピーのような炎症反応が起きやすくなってしまいます。反対に、充分な亜鉛を摂取することで、きちんと成熟した免疫細胞を作り出すことができるようになり、免疫反応を正常に調整できるようになります。
皮膚の再生を促進してくれる
亜鉛の重要な働きとしてもう一つ、「皮膚や粘膜の再生を促して再生を助ける」という働きがあります。
亜鉛には細胞が分裂し、増殖させるために必要な酵素が作られるのに必要な物質です。酵素とは、体内で起こる化学反応を促進させる媒介となる物質のことです。
亜鉛が不足していると、この酵素が充分に作られず、皮膚や粘膜の再生や、傷の治りが遅くなってしまいます。
反対に、これを補ってやることで細胞の分裂が促進されて、皮膚の再生が早くなります。
例えば、私たちが利用するホッカイロを考えてください。ホッカイロは中に入っている鉄の粉が酸素と反応することによって発熱します。しかし、鉄粉だけで発熱反応が起こる訳ではありません。
ホッカイロの中には、鉄粉の他に塩が入っています。この塩が鉄と酸素の反応を促進させる媒介の役割をしているためホッカイロが発熱するのです。
つまり、ホッカイロの発熱を細胞分裂と置き換えた時に、その働きを促進させる塩を亜鉛だと考えることができます。
このように、亜鉛は私たちの皮膚の再生に欠かせない物質です。これを補ってやることで、
掻きこわしてしまった皮膚や、炎症を起こした肌の再生を早くしてくれます。
アレルギー反応や炎症を抑制してくれる
亜鉛はアレルギー反応や炎症反応を鎮める働きがあります。これは亜鉛が直接的に作用するのではなく、体内にある炎症反応を抑える器官の負担を減らし、充分に働けるようにするというものです。
私たちの体の中には「副腎」というホルモンを作り出す器官があります。ホルモンとは体内を巡る情報伝達物質のことを指し、私たちの体はこのホルモンを介して情報をやり取りすることで、各器官の働きを一定に保っています。
副腎は体の炎症を鎮める働きを持つ「コルチゾール」というホルモンを作り出します。この副腎が疲弊して働きが落ちると、コルチゾールが分泌されにくくなってアトピーの炎症を抑えることができなくなってしまいます。
この際に副腎を疲弊させる要因としてあげられるのが、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。インスリンは血糖値を下げる働きを持つホルモンで、この分泌量が下がってしまうと糖尿病になってしまいます。
亜鉛が不足すると、このインスリンの分泌量が乱れてしまい、必要以上に分泌されたり、または分泌量が不足したりしてしまいます。
さて、先ほど、コルチゾールには炎症を抑える働きがあると説明しましたが、コルチゾールは別名「抗インスリンホルモン」とも呼ばれ、インスリンの作用に反して血糖値をあげる作用を持ちます。
コルチゾールとインスリンの2つの作用によって私たちの血糖値は一定に保たれているのです。
通常は問題は起きませんが、亜鉛不足によってインスリンの分泌量が乱れると、それに応じてコルチゾールの分泌量も乱れます。すると、副腎は本来の炎症を抑える働きに加えて、血糖値の調整で酷使されるされるため、疲弊してその機能が落ちることになります。
結果として、アトピーの炎症を抑える働きが落ちて、症状が悪化したり、治りにくくなったりするのです。
亜鉛には直接的ではありませんが、炎症を抑える働きをする器官の負担を減らす作用があります。亜鉛を十分に補給することでこの炎症を抑える効果を充分に発揮できるようにするのです。
ここまで説明してきたように、亜鉛は色々な角度から、アトピーの改善を助ける作用があります。
アトピーで悩む方は、この亜鉛が不足しがちな傾向にあるため、補給して上記の働きを活性化することでアトピーが改善しやすくなります。
亜鉛の摂りかた
ここまで、アトピー改善における亜鉛の重要性について説明してきました。しかし、私たちの普段の食事には、亜鉛が不足することがとても多いです。
現代の食生活では、加工食品や精製食品が使用されることが多いですが、こういった食品には圧倒的に亜鉛が不足しています。
加工食品やインスタント食品を中心とした食生活を送っていると、亜鉛は充分には摂れなくなってしまいます。
また、アルコールの摂取も亜鉛不足につながります。アルコールの分解に利用される酵素の活性化に亜鉛が利用されてしまうからです。
つまり、上記のような乱れた食生活を正し、亜鉛を多く含む食品を摂ることが必要になります。
亜鉛が豊富な食品としては、牡蠣、イカ、カニ、ホヤなどの魚介類、豚肉、ごま、チーズなどがあげられます。特に牡蠣の亜鉛含有量はダントツです。季節ものではありますが、可能ならば摂るといいでしょう。
【亜鉛を多く含む食材】
牡蠣、スルメイカ、タラバガニ、タラコ、ホヤ、イワシ、煮干し、豚肉、牛肉、抹茶、松の実、ごま、など
このように現代の食生活では亜鉛が不足しがちです。そのような食生活を見直し、上記に記したような亜鉛を多く含む食材を積極的に摂るようにしましょう。
まとめ
亜鉛はあまり聞きなれない栄養素ですが、アトピーの改善において、とても大きな働きをする栄養素です。
しかし、アトピーで悩んでいる人には、亜鉛が不足していることが多いです。
亜鉛不足を解消するために、普段の食生活を見直して、亜鉛を多く含む食材を積極的に摂るようにしましょう。
そうすることで、炎症の治りや、皮膚の再生が早くなりアトピーの改善がとても楽になります。
ぜひ、実践してみてください。