改めて説明するまでもなく、アトピーとは皮膚にあられる疾患です。そのため、多くの人は皮膚の炎症にばかり注目し、症状を抑えるためにステロイド剤やプロトピックを塗ることに一生懸命になります。
しかし、それはアトピーという疾患の表面しか見ていない治療法です。アトピーを治したいと考えるなば、表面ばかりではなくアトピーの本質に目をむけなけばいけません。
アトピーの原因の一つとして腸の壁面が傷ついていることがあります。「腸壁は肌の状態を映す鏡」と言われるように、腸壁が傷んでいると肌の状態も比例して悪くなるのです。
反対に、腸壁の状態を改善してやれば、アトピーの根本治療につながるとも言えます。
このページでは、アトピーと腸壁との関係について詳しく説明していきます。
目次|このページでわかること
腸は肌の状態を表す鏡
腸壁の状態は肌の状態を表す鏡だと言われています。つまり、腸壁がボロボロであると肌の質もボロボロというわけです。
このような状態であると、いくらステロイドを塗っても、一時的には症状は改善しますが、塗るのをやめるとすぐに逆戻りしてしまいます。そして、このサイクルを続けているうちにステロイド依存の完成となるのです。 したがって、傷ついた腸壁を健全にして、原因を断つという思考が必要です。
では、「腸壁が傷ついている」とはどの様な状態を指すのでしょうか。
私たちの腸は拡大してみると、網の目の様な構造をしています。この網の目から食事よって体内に取り入れたものを栄養素として吸収します。そして、同時に体の中に入ってきた有害な物質や不必要な物質が体内に侵入するのを防ぐ働きも担っているのです。
腸が健全な状態であれば、体にとって必要な栄養素のみを吸収し、不要なものや有害なものはブロックしてくれます。
しかし、誤った食生活を続けていると、腸内環境が悪化してしまいます。すると、腸の壁面の網の目構造がボロボロになり、未消化の物質や有害物質などを体内に取り入れてしまうのです。
その結果、体内に侵入したこれらの異物に対して免疫システムが反応し、アトピーのようなアレルギー症状を引き起こすのです。
腸は体の中のセキュリティーゲートのようなものです。腸が健康な状態であれば、自分にとって有益なものだけを通し、害を及ぼすようなものは弾いてくれます。
このように、私たちの腸は食物の消化吸収の他に、体の外から入ってくる異物に対するバリアの機能も合わせ持っています。
腸内環境が悪化することによってこのバリアに隙間ができてしまうと、アレルギー物質やその他の有害物質に対して無防備な状態になります。肌で例えると、乾燥してボロボロの状態です。
そのため、アトピーの症状が出るのです。
腸壁の状態を健全にするには食事から
ここまでの説明で、腸壁の状態がアトピーにとっていかに重要かがお分かりいただけたと思います。
では、傷ついた腸壁を修復するには、また、腸壁が傷つかないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
その答えは食事にあります。現代人の食生活は、とても腸内環境に優しいとは言えません。これが「昔はアトピーなんて無かった」と言われる理由のひとつでもあります。
誤った食生活を正すことでアトピーに強い体質を手に入れることができます。
その際に気をつけることは、食事の「量」「時間」「質」です。
順番に説明していきます。
食事の「量」の問題
まずは、食事の量の問題から説明します。
皆さんは普段どのような食生活をしていますか?1日3食、全て満腹になるまで食べて、さらに間食でおやつ、などという食生活を送っていませんか?
心あたりがあると思います。
このような食生活は、腸に対して全力の消化力を常に求めていることになるのです。 この状態を続けていると、腸の消化吸収の働きは少しずつ落ちてきます。すると、腸の中には未消化の物質がたまり腐敗していくことになります。
このような未消化の物質はやがて有害な毒素や活性酸素を発生させるようになり、これによって腸壁の細胞を傷つけてしまうのです。
例えば、人の体内は36℃~37℃に保たれています。そのような環境に未消化の食物を放置しておくことは、夏場に食材を放置しておくことと同じようなものです。
放置され続けた食材はやがて腐敗し、異臭や有害な物質を発するようになります。 これが、腸内で起きていると想像すると、いかに腸内環境に良くないかがわかると思います。
多すぎる量を食べる食生活を続けていると、腸の消化吸収や排泄の働きが落ちて、未消化の物質を溜め込むようになってしまいます。 このことによって発生する有害物質によって腸壁の細胞が傷つき、バリア構造が破壊されてしまうのです。
これらを防ぐためには、有効なのは食事の回数を1日3食から、1日2食にし、さらに一回の量を腹8分目にすることです。そうすることによって、腸を休ませる時間を作るのです。
また、腸内に何もない状態を作ることで、腸内では「モチリン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。モチリンには腸の蠕動運動を活発にして、排便を促してくれる作用があるのです。空腹時にお腹が「グー」となるのは、このモチリンが分泌されている証拠です。
この作用によって、腸内に溜まっている有害物質を排出することができるのです。
食事の回数を減らすことは最初は大変で修行のように感じるかもしれません。しかし、1週間ほど我慢して続けると、だんだんと慣れていき、3週間もすると習慣になってしまいます。
食事の「時間」の問題
次に食事の時間の問題について説明します。
腸にも私たち自身と同じように活発に働く時間帯があれば、働きが低下する時間帯もあります。働きが落ちる時間帯に食事をすることは「少し休みたい」と言っている腸に対して、余計な仕事を強いていることになります。
では、腸が休みたい時間帯とはいつ頃でしょうか。答えは「夜」です。
夜になると、体のサイクルが食べ物からエネルギーを吸収して消費するというサイクルから、体内に溜まった老廃物などを排出するサイクルに入ります。
このように、体が排出のサイクルにある時に、反対の消化吸収の仕事を押し付けることは腸にとって、とても負担になります。 つまり、夜遅くの食事を避けることが、腸を休ませることになるのです。
例えば、私たちが仕事をする際に、複数の異なる仕事をしようとすると、効率が著しく低下します。
反対にやるべきことを整理して、1種類の仕事に集中することで、効率は倍以上にもなります。腸の働きも同様で、その働きのサイクルに合わせた仕事をさせてあげることで負担を減らすことができるのです。
私たちの腸にも、私たち自身と同じように、活動のサイクルがあります。これらをしっかりと理解して食事をすることで、腸への負担が減り、腸壁を傷つける原因を取り除くことができます。
理想の食事のリズムとして、深夜~朝にかけては食事を取らずに、昼食と夜9時までの食事にとどめるようにしましょう。
食事の「質」の問題
さらに、食事の質の問題について説明します。
食事の量や時間の他に、何を食べるかも重要になります。
現代の欧米型の食生活には腸内環境を悪化させる内容が目白押しです。そのような食品はなるべくとらないようにしましょう。下記に摂るべきではない食品の例をあげます。
動物性タンパク質
腸に負担をかけるものの代表として、肉や卵などの動物性タンパク質が挙げられます。
アンパク質は通常は消化によって「アミノ酸」という最小の物質まで分解されてから吸収されます。このようにアミノ酸にまで分解されれば問題は起こりません。
しかし、肉類や卵、乳製品などの動物性のタンパク質は人間にとっては分解しにくいものであり、他の食品より大きな消化力を必要とします。そのため、多くのタンパク質は消化が不十分なまま腸内にとどまります。
腸内に、消化が不十分のタンパク質が存在すると、すでに説明しているように、腐敗して有害な毒素や活性酸素を発生させるようになります。 すると、腸壁の細胞を傷つけてしまい、綺麗な網の目構造をボロボロにしてしまうのです。
さらに、動物性のタンパク質にはもう一つ問題があります。
先ほど、動物性のタンパク質は消化がしにくいと説明しましたが、この時に分解しきれなかったタンパク質は「ポリペプチド」というアミノ酸の粒がいくつも繋がった、未消化のタンパク質となりなります。
腸壁が健康な網の目構造を維持していれば、ポリペプチドは体内に吸収されませんが、網の目構造が傷んでいると、ポリペプチドが体内に吸収されてしまいます。
ポリペプチドは異物としての性質を残した状態であるため、そのまま吸収されると、アトピーのようなアレルギー症状を起こす元になってしまうのです。
このように、動物性のタンパク質は腸内環境に悪影響をもたらします。アトピーの改善を行う際には避けた方がいいでしょう。
>>動物性タンパク質とアトピーの関係についてさらに詳しく知る
白砂糖
腸に負担をかけるものとして次に説明するのが「砂糖」です。特に精製された「白砂糖」は腸にとって良くありません。
私たちの腸の中には腸内細菌という微生物が100兆個生息しています。そして、この腸内細菌は、体にとって有益な働きをする「善玉菌」、悪影響をもたらす「悪玉菌」、そしてどちらでもない「日和見菌」で構成されています。
これらの菌は常に勢力争いをしていて、善玉菌と悪玉菌のどちらが優勢になるかによって、腸内環境の良し悪しが変わるのです。 腸内細菌のバランスが良ければ、食物の消化を助けてくれるため、腸への負担が減りますし、傷ついた腸壁の再生も早くなります。
しかし、精製された白砂糖は、悪玉菌の餌になってしまうため、甘いものを食べ過ぎると悪玉菌が増殖し腸内環境の悪化につながります。 甘いものを食べることは傷口に塩を塗っているようなものだと考えてください。
このように、砂糖には腸内細菌のうち「悪玉菌」の増殖を招き、腸内環境の悪化させてしまうのです。
小麦製品
腸壁を傷つける食品として最も悪影響なものが「小麦粉」です。
小麦粉のグルテンには「グリアジン」という特殊なタンパク質が含まれています。このタンパク質は腸壁にダイレクトに作用します。
先に、腸には食物を消化して吸収する働きのほかに、体の外からの異物を弾くバリアの役割も担っていると説明しました。
この時に、腸壁網の目の大きさを調節して、何を吸収し何を弾くかを決める物質として「ゾヌリン」という物質があります。この物質には腸の網の目構造の調節の他に、腸壁の構造自体を分解してしまう作用もあるのです。
小麦粉に含まれるグリアジンはこのゾヌリンを大量に腸内に放出させます。その結果、腸壁の構造が分解されて、スカスカになってしまうのです。
このように、小麦粉には腸壁の構造を直接傷めてしまう成分が含まれています。アトピーを治したいのであれば小麦粉を使った食品、パンやパスタ、ピザなどは極力避けるべきです。
ここまで、腸壁を傷つけてしまう食事について説明をしてきました。 思い当たるものもあったのではないでしょうか?
現代人の食生活では腸壁を傷つける原因となるものが多くなる傾向にあります。このような食生活を見直し、腸に優しい食事を心がけてください。腸を労わればアトピーは改善しやすくなります。
まとめ
冒頭で説明したように、腸の状態は肌の状態を表す鏡です。
腸の状態を健康に保ってあげれば、アトピーの炎症は改善しやすくなり、肌は綺麗になっていきます。
そのためには、日々の食生活に気をつけなければなりません。現代人に広まった欧米型の食事は確かに美味しく魅力的です。しかし、私たちが美味しいと思うものが、体にとって美味しいとは限らないのです。
これまで慣れてきた食事を制限するのは大変かもしれません、しかし、慣れてしまえば苦ではありませんし、この食事制限は一生続く訳ではないのです。
あなたの人生の中で、アトピーを治す間の数ヶ月頑張ることで、その後にアトピーと無縁の人生が待っていると思えばできそうな気がしませんか?
ぜひ、実践してみてください。
また、腸内環境とアトピーにはさらに密接な関係があります。下記のページに詳しく解説しているので、合わせて確認して理解を深めてください。