「ヒルドイド」
アトピーの治療でも結構頻繁に処方されることがある医療用保湿剤です。
ネット上では、「アンチエイジング効果がある」「2〜3万の美容クリームよりも効果がある」というような噂まで目にします。
そのため、顔のアトピーにこの「ヒルドイド」を使用しようと考えることもあるでしょう。ただ、顔にヒルドイドを塗った結果、アトピーが悪化してしまったという方も多いです。
このページでは、顔にヒルドイドを使えるのかどうかについて説明していきます。
目次|このページでわかること
ヒルドイドとは?
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)とは保険適用されている保湿剤のひとつで、アトピーの治療でも結構使用されているものです。
保湿剤には主に2タイプがあり、皮膚の表面に油の膜を張って水分の蒸発を防ぐタイプの物と、肌に水分を補給するタイプの物があります。
ヒルドイドは後者の肌に水分を補給するタイプの保湿剤です。
ヒルドイドの主な保湿成分は「ヘパリン類似物質」という糖類の1種(ムコ多糖)で、自身の周りに水の分子を吸着する性質があります。
これを肌に塗ることで、水分を吸着したまま肌に浸透し皮膚に潤いを与えることができます。
クリームタイプ、軟膏タイプ、ローション、スプレーなど、いくつかの剤型がありますが、基本的に作用はどれも同じです。
アトピーの顔にヒルドイドを使うのはオススメしない
ヒルドイドは保湿力も高く、とても優れた保湿剤です。普通の方が使うのであれば全く問題ないでしょう。
ただ、アトピーの人が、特に顔に使うのはあまり良くない場合があります。
その理由の一つとして、ヒルドイドには保湿作用の他に血行を良くするという効果があることがあります。血行が良くなると血液中の免疫細胞が活発になってしまいます。そのため、炎症が起きている部位に使用するとかゆみが強くなってしまうのです。
とは言っても、
「炎症じゃなくて乾燥に使うんですけど、、、」
と思った方もいるでしょう。
ですが、みなさんが乾燥だと思っている肌のガサガサは炎症である可能性の方が高いのです。炎症がひどくなると皮膚のターンオーバー(細胞の入れ替わり)が早くなり、皮膚の表面がめくれてくるようになります。
そのため、肌がガサガサに乾燥したようになるのです。(実際に乾燥もしている)
(引用)
また、ヒルドイドを使用すべきでない理由としてもう一つ、ヒルドイドを使うと血が止まりにくくなるということもあります。ヒルドイドには「血液凝固抑制作用」と言って、血液が固まるのを抑える作用があるのです。
・出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある患者
〔血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある・僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者
〔血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある〕ヒルドイドソフト軟膏添付説明書
アトピーの方は、引っ掻いて出血していることが多々あります。このような場所にヒルドイドを塗ってしまうと血が固まらずに傷が治りにくくなってしまうことがあるのです。
まとめ
ヒルドイドはとても優れた薬ではありますが、アトピーの方にはあまりオススメできない薬です。
その主な理由はヒルドイドの持つ血行を良くする作用です。血行が良くなることで免疫細胞の活動が活発になり、かゆみが増してしまうからです。
特に、顔は毛細血管が集中している場所であり、血行促進作用によってかゆみが強くなりやすい部位です。
顔の乾燥にヒルドイドを使用するのは避けた方が懸命でしょう。