「ビオチン」という栄養素をご存知ですか?
ビオチンとはビタミンB群のうちの1種で、別名「ビタミンB7」「ビタミンH」などとも呼ばれ、健康な皮膚を保つために必要な栄養素です。
ビオチンは通常、必要量が腸内細菌によって作られたり、普段の食事から補われたりしていますが、何らかの影響によって不足してしまうことがあります。
このビオチンが不足してしまうと、健康な皮膚の状態が保てなくなり、アトピーの炎症を悪化させてしまったり、治りが遅くなってしまったりしてしまうのです。
このページでは、ビオチンとアトピーの関係について説明していきます。
目次|このページでわかること
ビオチンの働き
まずは、ビオチンの働きから説明していきます。
すでに説明したように、ビオチンはビタミンB群の1種であり、健康な皮膚を維持するために重要な働きをしています。
その働きが主に次の3つです。
【ビオチンの主な働き】
- 炎症物質を体外に排出(ヒスチジンの排出)
- 皮膚の再生(タンパク質の生成)
- 保湿成分の生成(細胞間脂質の生成を助ける)
炎症物質を体外に排出
まずは、「炎症物質を体外に排出する働き」について説明します。
ビオチンには、体の中にあるかゆみ成分の元を体外に排出してくれる働きがあります。
私たちの体に異物が侵入してきた際に、体内の免疫細胞が反応してそれを攻撃して排除しようとします。その際に攻撃用の物質として放出されるのが「ヒスタミン」と呼ばれる化学物質です。
このヒスタミンは異物を攻撃するものですが、同時に自分自身の組織も攻撃してしまいます。その結果、アトピーの激しいかゆみや炎症が起こることになります。
ビオチンにはこのヒスタミンの元となる「ヒスチジン」という物質を体の外に排出してくれる作用があるのです。そのため、かゆみや炎症が発生しにくくなります。
皮膚の再生を促す
次に、「皮膚の再生(タンパク質の合成)」です。
ビオチンは体内で、皮膚や粘膜の材料となるタンパク質が作られるのを助ける働きがあります。
タンパク質は私たちの体の中で、アミノ酸という分子を結びつけることで作られます。この際に、アミノ酸を結びつけてタンパク質を作り出す物質として「カルボキシラーゼ」という物質があります。ビオチンにはこのカルボキシラーゼの働きを助ける働きがあるのです。
言ってみれば、ビオチンはカルボキシラーゼという職人の助手です。カルボキシラーゼが一生懸命アミノ酸の分子を組み立てて、たんぱく質という品物を作っているのを助けて、作業効率を上げてくれるのです。
このことによって、皮膚や粘膜の元となるタンパク質の合成を助けるのです。アトピーの症状に悩んでいる方の体は、炎症を起こしている肌、掻きこわしてしまった肌を再生しようと頑張っている状態です。ビオチンが不足してしまうと、アトピーによって傷ついた肌の再生が遅くなってしまうことになるのです。
保湿成分を作り、肌に潤いを保つ
3つ目が、「皮膚の保湿成分の生成」です。
ビオチンの働きとして最後に上げられるのが、皮膚の保湿成分が作られるのを助けるということです。
私たちの皮膚の表面は「角層」と呼ばれる強固なタンパク質の膜が何層にも重なって覆われています。それによって、皮膚は細菌やアレルゲンといった外界の異物から体を守る働きを担っています。言ってしまえば天然のバリアです。しかし、この角層がバリアの働きを十分に発揮するには皮膚が潤いを保っている必要があるのです。
そのために、その層の間に挟み込まれるように脂質が満たされています。この脂質を「セラミド」といいます。 深夜の化粧品のCMなどでも潤い成分として紹介されることがあると思います。この脂質が角質の隙間を埋めるように存在することで、皮膚の内側にある水分の蒸発を防ぎ、潤いのある皮膚を維持しているのです。
先に説明している「カルボキシラーゼ」という物質にはいくつかの種類があります。その中にはセラミドのような脂質の合成を行う物質があります。 ビオチンはこの物質の働きも助け、肌の潤い成分であるセラミドが作られるのを促進するのです。
ここまでの説明のように、ビオチンは健康な皮膚を維持するために必要な栄養素であると言えます。アトピーで悩む方の中にはこのビオチンが不足している方が多いです。
ビオチンが不足する理由
私たちが体内で利用するビオチンのうち約40%ほどは、腸内細菌によって生み出されているとされています。 そのため、この腸内細菌にとって悪影響を及ぼしてしまうとビオチンの生成量が減り、ビオチン不足となります。
その原因として考えられるのが、過度の偏食による腸内環境の悪化、そして、抗生物質などの薬の使用です。 中でも、抗生物質の使用の影響は大きいと考えられます。
抗生物質は細菌などの微生物を殺菌し、感染症などを治す薬品ですが、その効果は有害な菌だけでなく、腸内細菌など人体に有益な菌に対しても無差別に働きます。 そのため、良かれと思って使用した薬によって結果的に皮膚に悪影響が生じてしまうのです。
このように、腸内細菌を害することによって、ビオチンの産生量が減りビオチン不足を招いてしまうのです。
ビオチンを補給するには
では、このビオチンを補給するためにはどのようにしたらいいでしょうか。
その方法には次の2つのアプローチがあります。
【ビオチンを補給する方法】
- ビオチンを多く含む食品を摂取する
- 善玉菌を摂取する
それぞれ説明していきます。
ビオチンを多く含む食品を摂取する
まずは、「ビオチンを多く含む食品を摂る」ということです。
ビタミンB群であるビオチンを多く含む食品には、卵、豚肉、うなぎ、レバー、マグロ、さんま、落花生やカシューナッツなどのナッツ類があります。 中には、肉類や卵など、アトピーにとって良くない食品もあるので、ご自身の食べられる食品を選ぶといいでしょう。
【ビオチン(ビタミンB群)を多く含む食品】
<卵>
卵黄(卵白は除く)
<動物の肝臓>
鶏レバー、豚レバー、牛レバー
<魚介類>
うなぎ、マグロ、さんま、など
<ナッツ類>
アーモンド、カシューナッツ、落花生、ヘーゼルナッツなど
<きのこ類>
舞茸、マッシュルーム、しいたけ、えのきだけ、など
善玉菌を摂取する
ビオチンを補給する、もう1つの方法が「善玉菌」を補給することです。善玉菌とは、腸内で人体にとって有益な働きをする菌の総称で、有名なものに「ビフィズス菌」などがあります。
先に、ビオチンの多くは腸内細菌によって生成されていると説明しました。その細菌が善玉菌の1種である「アシドフィルス菌」です。
もちろんこのアシドフィルス菌を直接摂ることも有効ですが、アシドフィルス菌を含む食品やサプリメントはとても少ないです。ただ、この菌は人の腸内にもともと存在しています。そのため、他の善玉菌を取って、腸内環境を良くすることでも間接的にアシドフィルス菌を増やすことができます。善玉菌は善玉菌を増やすのです。
食品でビオチンを補給し続けることは大変です、しかし、このアシドフィルス菌を補給し、十分に腸内に存在させることができれば、この菌からビオチンを補うことができます。
まとめ
ビオチンは健康な皮膚を保つために重要な栄養素です。そのため、ビオチンが不足してしまうと皮膚の健康を損なうことになってしまいます。そして、アトピーの方には、このビオチンが不足している方が多いです。
反対に言えば、ビオチンを補うことで、アトピーの改善が期待できます。そこで有効なのが、腸内環境を良くしてビオチンを産生するアシドフィルス菌を腸内に多く存在させることです。腸内環境を良くするには普段の食事から「善玉菌」を多く摂ることや、サプリメントなどで補うことが必要です。
これらのことを実践して、必要量のビオチンを摂取できれば、アトピーの皮膚の改善が見込めるのです。ぜひ試してみてください。