「自律神経」という言葉をご存知ですか?
自律神経とは、その名の通り、私たちの意思とは関係なく独立して働いて、体の働きを制御している神経のことです。
自律神経はアトピーの症状とも深い関わりがあり、自律神経が乱れている状態であると、アトピーの症状が悪化してしまうことになります。そして、この自律神経は私たちの腸の状態によって大きく影響されます。つまり、腸の状態を良好に保つことで、自律神経の乱れを整えてアトピーが改善しやすくなるのです。
このページでは、自律神経と腸内環境、アトピーの関係について、詳しく説明していきます。
目次|このページでわかること
自律神経とは
「自律神経」とは、簡単に説明すると、私たちの脳とは独立して働いて、常に体の状態を良好に保つ働きをする神経のことです。
私たちの体にはいくつもの神経が張り巡らされていて、その神経を通じて様々な情報のやり取りをすることで体の働きを制御しています。その中で、自律神経とは、体の隅々に張り巡らされた神経であり、脳からの指令を受けなくても、ある程度自動で判断して体の状態を正常な状態に維持するように制御している神経です。
自律神経と呼ばれるものの中には、体がストレスを受けた時や、緊張した時に優位に働く「交感神経」と、体がゆったりとリラックスした時に優位に働く「副交感神経」があり、どちらかが優位に働いているときは、片方は休んでいるというように、対立した働きをしています。
例えば心臓の動きを見てみましょう。ストレスがかかって緊張した時には、交感神経が優位に働いて、心拍数が上昇します。反対に、ゆったりとリラックスした状態であると、副交感神経が優位になり心拍数は落ち着いていきます。
このように、自律神経は交感神経と副交感神経がまるでアクセルとブレーキのように働きながら、体中の様々な働きを常に良好に保ってい流のです。
自律神経の乱れが炎症体質を招く
では、これらの自律神経の働きはアトピーとはどのように関係しているのでしょうか。このことを理解するには「顆粒球」と「リンパ球」の2種類の免疫細胞について理解しなければいけません。
私たちの体を細菌や異物から守っている免疫細胞の中には顆粒球とリンパ球という種類があり、これらはお互いがお互いの増殖を防ぐという性質を持っています。
顆粒球から説明していきます。顆粒球と異物が体内に侵入してきた時に、それを攻撃しようとする免疫細胞の1つです。
体内に異物が侵入してきた時には、白血球などの免疫細胞が働いて、その異物そ処理します。その際に体の組織まで攻撃されてしまうことで起きるのが、アトピーの症状などの炎症です。体内で炎症が起きると、そこで働いている免疫細胞から「サイトカイン」と呼ばれる情報伝達物質が分泌されます。
このサイトカインを受け取った顆粒球は、その場所での異物の処理を、より効率的に行う為に、炎症を起こしている場所に集まり自分自身も異物に対して攻撃を仕掛けようとします。これによって、異物の処理を速やかに済ませようと働くのですが、この時の顆粒球の働きによって、炎症反応は大きくなってしまうのです。
顆粒球には「アドレナリン」という神経伝達物質に反応する装置(受容体)が備わっています。
体がストレスを受けたり、緊張したりすると交感神経が優位に働くことでアドレナリンが分泌されます。すると、これの影響を受けた顆粒球は、活性化・増殖して過剰に働き、炎症反応が大きくなります。また、通常ならば反応しない細菌や異物に対しても敏感に働いてしまい余計な炎症を起こしやすくしてしまうのです。
アトピーで炎症を起こしている状態は交感神経が優位に立っている状態です。さらに、激しいかゆみや痛みなどのストレスで、より交感神経が刺激されています。その為、炎症が起きる→交感神経優位に→かゆみやストレスを感じる→交感神経が刺激される→炎症が悪化する、という悪循環が起きてしまいます。
反対に「リンパ球」を見てみましょう。リンパ球も免疫細胞の1種ですが、先に説明したように、リンパ球は顆粒球の増殖を阻害する働きがあります。
リンパ球にも神経伝達物質に反応する受容体が備わっており、それは「アセチルコリン」という伝達物質対して反応します。
アセチルコリンは副交感神経が優位になった時に分泌される物質です。これを受けたリンパ球が活性化されることによって、顆粒球の増殖や活性化を抑えて炎症を沈めるように働くのです。
このように、私たちの身を守る免疫細胞には2つの自律神経の働きによって活性化される「顆粒球」と「リンパ球」があります。これらの神経のバランスが崩れることによって、皮膚炎を起こしやすい体質になってしまうのです。
反対に言うと、この神経の働きを整えることで、炎症が起こりにくくなります。
腸と自律神経の関係
さて、ここまで自律神経とアトピーとの関係について説明してきました。自律神経の乱れは免疫細胞の働きも乱れさせ、アトピー悪化の原因になります。
しかし、反対に言うと自律神経の働きを整えることで、アトピーの炎症を抑えることもできることがわかります。
すでに述べたように、副交感神経はリラックスした時に優位になる神経です。
その為、副交感神経を優位に働かせるには、ゆったりと入浴したり、体を温めたり、落ち着く音楽を聴いたりすることが有効です。しかし、実際のところ、会社にお勤めの方であったりすると、中々そのような時間が取りにくいのが現実だと思います。
私も、社会人になってアトピーが悪化した時は、朝から晩まで仕事をして、帰宅してからは、持ち帰りの仕事や新入社員用の課題をこなし、就寝は3時過ぎで休日出勤も多かった為、とてもリラックスとは言っていられませんでした。
副交感神経を優位に働かせる方法として、もう1つ、とても有効なのが「腸内環境の健全化」です。
自律神経の働きは腸内環境ととても密接な関係があるのです。ここまで、ストレスや緊張によって交感神経が優位になると説明してきました。実は、腸内環境が良好で食べ物の消化が促進されると、副交感神経の働きが優位になり、自律神経の乱れを整える作用があるのです。
では、腸の働きを良くするにはどのようにしたらいいでしょうか。
それは「腸内フローラ(腸内細菌叢)」を良好に整えるということになります。
私たちの腸には「腸内細菌」と呼ばれる微生物が棲息しています。これらの細菌群は、体にとって有益な働きをする「善玉菌」、有害な働きをする「悪玉菌」、先の2つのバランスを伺って、優勢な方に働きを合わせる「日和見菌」で構成されています。
これらの菌のバランスを「善玉菌」が優勢なバランスに整えることで腸の働きを良くしてくれるのです。
そのためには日々の食事で意識しなければいけないことが3つあります。それが、「悪玉菌を増やすような食事内容を避ける」「乳酸菌をはじめとする善玉菌を多く摂る」「善玉菌のエサになるもの意識して摂る」ということです。
それぞれ順番に説明していきます。
まずは「悪玉菌を増やす食事内容を避ける」ということについて説明していきます。
悪玉菌を増やす食事内容とは、簡単に言ってしまえば、欧米風の食事です。より具体的にいうと肉類などの動物性タンパク質、砂糖などが挙げられます。
人の体は、肉類を消化するのは不向きであるため、肉食を続けると未消化のタンパク質が長く腸内にとどまり、腐敗を起こします。すると、その未消化のタンパク質から発生する有害物質が悪玉菌を増やすもとになってしまいます。
また、砂糖も同様であり、普段私たちが食べる菓子類に含まれる砂糖は腸内で悪玉菌のエサになり増殖させてしまうのです。どれも、欧米風の食事で非常に多く使用されるものです。むしろ使用されていないものの方が少ないです。
次に、「乳酸菌をはじめとする善玉菌を多く摂取する」ということです。
善玉菌を増やすには善玉菌を摂取する必要があります。そこで、善玉菌の代表格が「乳酸菌」というわけです。乳酸菌を多く摂ることで、腸内フローラのバランスを善玉菌優位にすることができるのです。
ここで注意点がひとつあります。乳酸菌と聞くと多くの人が「ヨーグルト」を思い浮かべます。しかし、ことアトピーの改善目的であるならば、ヨーグルトの摂取はおすすめできません。
市販のヨーグルトの多くは甘く、砂糖が大量に使用されています。そのため、よく原材料表示を見て選ばないと、一生懸命ヨーグルトを食べた結果、悪玉菌を増やしているということになりかねません。
乳酸菌を多く含むものとしておすすめなのが、みそ、納豆、漬物などの、植物性の発酵食品がおすすめです。これらに含まれている、乳酸菌は植物性の乳酸菌であり、一般的に生命力の強い乳酸菌とされています。つまり、生きて腸まで届きやすいということです。また、これらの食品は、日本で昔から食べられている伝統食品ですので、日本人の体質に合っているという利点もあります。
最後に、「善玉菌のエサになるもの意識して摂る」ということです。
善玉菌のエサになるものとしては、「食物繊維」と「オリゴ糖」などの消化しにくい糖類があります。
食物繊維は腸内で「短鎖脂肪酸」という物質を作り出し、これには善玉菌を増やす働きがあります。また、この短鎖脂肪酸は腸の神経系に作用して、蠕動運動を促し、排便を助けてくれます。そのため、腸内の物質が腐敗して悪影響を生じさせる前にスムーズに排出することができるようになります。
さらに、オリゴ糖をはじめとする消化しにくい糖についてです。
腸内細菌は主に糖類をエサにして増殖しますが、善玉菌と悪玉菌で、糖の好みが違いその差が消化のしやすさです。先に、砂糖が悪玉菌のエサになるということを説明しましたが、一般的な砂糖は人の体内で容易に消化されるという性質を持っています。このような糖は悪玉菌のエサになり、善玉菌にとっては邪魔な存在です。
反対に、オリゴ糖は、人の体内では分解することが難しい性質を持っており、これらの糖は善玉菌にとってはご馳走ですが、悪玉菌にとっては苦手な糖なのです。オリゴ糖などの難消化性の糖を摂ることによって、悪玉菌の繁殖を抑えて、善玉菌を増やすことができます。
ここまで、腸内環境を整える食事について説明してきました。
しかし、現実的には理想論と言わざるを得ないこともあります。実家住まいの学生であったり、食事を作ってくれる奥さんがいればいいかもしれませんが、1人暮らしの学生や社会人であると、中々時間を作ってここまで食事に気をつけることはできません。
そのような時は、サプリメントの使用を考えるのも1つの手段です。
サプリメントには、食事よりも多くの量の乳酸菌を手軽に摂れるという最大のメリットがあります。また、薬ではありませんので副作用の心配もありません。
まとめ
ここまでの説明のように、アトピーの症状と自律神経にはとても密接な関係があります。
交感神経が優位に働けば、炎症は悪化し、副交感神経が優位に働けば炎症を鎮めてくれるのです。
そして、自律神経と腸内環境の間にも深い関わりがあります。腸内環境が健全な状態であると、自律神経の乱れを正して体の状態を正常に保ってくれるのです。このことからも、腸内環境を整えることがアトピーの改善につながることがわかります。
このページで説明したことを実践し、腸内環境、自律神経の乱れを整えてあげると、アトピーは改善されやすくなります。